時には風になって、花になって。




クイッ───。

襟を引かれたかと思えば、今度はぎゅっと抱きついてきた。


そして身体を離すと、まっすぐ見つめてくれる。



(これからも、サヤと…ずっと一緒?)



なにを言う。
私はずっとここにいるではないか。

…私はずっと、待っていたではないか。



(サヤ、くれは…好き)



消えるのはお前だろう。

私ではない。
人間の命というものはそんなものだ。


それなのにどうして私は動揺している…?



(これからも、ずっと…)


(ずっと…傍に…いてくれる…?)


(サヤは、ずっと、くれはの…傍にいる)



パクパクと懸命に伝えてくる。

かつて鬼は人間を襲った。
そして鬼もまた、人間に恨まれている。


まるで宿敵である2つの種族。



「愚かな小娘だ」



今にも握り潰してくれるというのに。

この姿は私の本当の姿ではない。


それならいっそのこと、喰ってしまおうか。

その方がこの馬鹿で愚かな小娘を閉じ込めておけるのではないか。



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