時には風になって、花になって。
そもそも笛を渡したというのに熊に襲われてから呼んだ小娘。
遅い、と文句を付けたが理解しているのだろうか。
「あんた珍しい顔をしてるじゃないか。あたしと遊ばないかい?」
「妖怪の中にもこんなにも綺麗な男が居たなんて」
人間も妖怪も女という生き物は変わらない。
こうして歩けば鬱陶しい目を向けられ、簡単に触れようとしてくる。
それに比べて同行する少女は少し違った。
それはまだ童だからか、それともサヤだからこそか。
「…全く、呼べと言ったであろう」
そんなことをしている隙に見失ってしまった。
さっきまで小さな手は袖を掴んでいたというのに。
タッ───!
紅覇は空を舞う蝶のように空中を飛んだ。
「お嬢ちゃんどこから来たんじゃ?もしかして人の子かのぉ?」
幼子を趣味としてる爺さん───それはあいつか。
サヤの腕を掴み、獲物を捕らえた狸が居た。
「なにをしている」
(くれは!)