時には風になって、花になって。
ピーーーーッと、思い出したかのように笛を鳴らすサヤ。
…それに何の意味があるというのだ。
「遅い、既に私は居る」
やはり使い方を丁寧に教えるべきだったか。
どうやらこの人の子は、少し阿保が過ぎるところがあるらしい。
「なんじゃ若僧。この娘はワシの獲物じゃよ」
「こいつは私の連れだ」
「こぉんな幼い人の子を連れてるなんて。随分と羨ましいのぅ」
そんな老人は首を傾げて、何かを確かめるようにくんくんとサヤへ鼻を近付ける。
「おかしい、確かに人の子なのに匂いがせんぞ。こやつは妖怪じゃ───うぶっ!!」
踏みつければ男は地面にうつ伏せのまま食い込んだ。
パッと自由になった少女はすぐ様紅覇の傍へ駆けつけ、袖をきゅっと掴む。
「いいか、次からは私を見失ったときに笛を鳴らせ」
コクコクと嬉しそうに頷くサヤ。
なにが面白いというのか。
私は全く面白くない。
そして温泉へ到着し、怪我をしていないものの紅覇も浸かることにした。
「…どういうことだ」