時には風になって、花になって。




「これは胃腸に効く薬草、それでこっちは風邪。持っていきな」



何束もある薬草を紅覇に渡し、長松は笑った。


連れられた場所は長松の親族の家らしい。

そこは薬屋を営んでいるみたいで、無料で分け与えてくれた薬草。



「要らん」


「なに言ってんのよ。子供はすぐ弱っちまうんだから」



あんたそれでよくこの子連れてるねぇ、とため息を吐かれた紅覇。

鬼であるこの男のこんなにも居心地の悪そうな顔を見るのは初めてだった。


この長松という人には紅覇でさえも敵わないらしく。



「ここでまた会えたのも何かの縁さ。またあっちの村にも寄ってくれよ」



とても人の良さそうな気さくな女性だ。

サヤの声が出ないということも一目見て分かったはずなのに、そこには1度も触れようとしなかった。


「また何かあったらうちに来な」なんて言って頭を撫でてくれる。



「おい親父!!居るかぁ!ぁあ!?」



───そのとき。


ダンダンと家の戸を乱暴に叩く音。

そこから顔を出した柄の悪そうな男が数人。



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