時には風になって、花になって。




(それにしても“妖怪様”じゃなくて普通に名前で呼べばいいのに)



人間と妖怪の在り方もだんだんと変化していた。

まだまだ村人を困らせる妖怪はいるとしても、人と妖怪の蟠(わだかま)りは昔よりは良好になっていて。


人に支える妖怪も増えている今日この頃。

だからこそ村人も優しい妖怪だと知れば、怯える眼差しは見せなかった。



(紅覇~、紅覇さーーん)



この村人の中で彼の名前を知っているのはきっと私だけだろう。

1ヶ所に留まらない生活の為、わざわざ名前を村人に教える必要はなかった。


それでも退治して親切にしてもらっておいて“妖怪様”と呼ばれるのは少しだけ違和感がある。



(く~~れ~~は~~!!)



まぁ紅覇はそんなこと気にしていないだろうけれど。

ほら今だって。

何回も呼んでるのに振り向きもしない。



「…くどい。聞こえている」


(えっ)



ねぇ紅覇、私が声出ない設定忘れてない…?

なんて思ってしまった。


出会ってから7年も経てば、どうやらお互いの関係性はここまで来るらしい。



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