時には風になって、花になって。
翌日は珍しく雨だった。
(今日は止みそうにないなぁ)
ザァァァァァァと、地面を叩く程の強い雨。
紅覇とサヤが歩く度に溜まった水溜まりから水しぶきが跳ねる。
だからこそなのか、辿り着いた村は人通りが無く静かだった。
良く言えば穏やか、悪く言えば不気味。
「…取り憑かれているな」
ポツリと前を歩く鬼は呟く。
取り憑かれている…?誰が…?
「この村全体が、だ」
そんなことあるのか。
だとすれば強力な妖力を持つ妖怪に違いない。
人は居ないと思っていたが、よくよく見渡してみればそんなことはなかった。
ボロボロな着物を纏った住人達は雨の中、雨具すら身に付けず農作業をしている。
(…この人達…おかしい…)
目に光を宿していない。
サヤと紅覇が通り過ぎても見ようともしないのだ。
そして気にもしていない、いや…見えていないと言った方が正しいか。
「雨なんか止まないよ」
唯一、立ち寄れば返事をしてくれた少年。