メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「こんにちは。」

「こんにちは・・・ じゃないわよ。人のこと騙しておいて。あんた、そんな顔して策士なんだ。私達がまんまと騙されたからハルと裏で笑ってたんでしょ。」

剣山のように刺々(とげとげ)しく言うけれど、それでも人を惹きつけてしまう魅力的な声だ。

「あの・・・。」

「店の制服着てるんだからごまかせないわよ。18歳以上なんでしょ。」

玲美さんは『18歳以上。大学生歓迎!』と書かれたバイト募集の貼り紙に目をやりながら言う。

「ごめんなさい。22歳です。」

彼女はつかつかと近寄ってくるとまるで値踏みするみたいに上から下まで私を見た。

「ふうん、胸フツーだし私服もあんな感じなのに変に色気あるんだ。」

「え・・・?」

「ま、男はあんたみたいに童顔で色気ある子好きだもんね。どうせ何回か遊ばれたら捨てられて終わりよ。ただでさえハルって恋愛長続きしないもの。」

玲美さんは満足そうに言うと私から離れた。

「あんたなんか、ハルにとってはただの使い捨てのおもちゃだよ。」

「・・・。」

「何か言ったら?それとも遊ばれてるってわかってて付き合ってるわけ?」

「・・・玲美さんて本当にすごく綺麗だなと思って。」

赤に紫メッシュの個性的な髪色もすごく似合っている。8.5頭身?いや、9頭身かもしれない。小さな顔の大きなスペースを占めるばっちりしたアーモンド型の二重の目。瞳の色はヘーゼルだ。シュッとした高い鼻に、厚みのあるセクシーな唇。上半身には絶大な存在感を誇る膨らみ、キュッとしまったウェストを挟みタイトな黒いミニスカートから伸びる長くて細い足。頭のてっぺんからつま先まで、アニメやゲームキャラのフィギュアみたいに完璧に整っている。

「はあ?人の話聞いてた?あんた今私に思いっきり侮辱されてんのよ!?」

玲美さんは苛立ち90%照れ10%という表情になった。

「とにかく、そんな余裕でいられるのも今のうちだけだからね!」

彼女は来た時よりもヒールの音を大きく響かせて去って行ったが、数メートル先のところで立ち止まり『あっ!』と声を上げた。
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