メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「・・・どういうことだよ。何でこんな時間まで・・・。」

「いやあさあ、昨日の午後から俺がここで撮影してたら、別の作業してたレミが自分の新作のモデルもキョウにしたいって言い出して。」

玲央が玲美を見ながら言うと彼女は気まずそうに目を逸らした。

「も、元々のモデルの子が急にキャンセルになって、これから探すのも大変だから、この子でいいかって思っただけよ!」

「え~?モデルの子キャンセルしたのはレミじゃん。俺の撮影、心奪われたように見つめちゃってさ。あのモデルの子いつも来ててレミの性格わかってるから、特に怒ったりしなくて良かったよね。」

「うるさい!黙ってなさいよ!」

玲美が玲央の顔面をクッションで殴る。

「いってぇ!なんで全力なんだよ~!暴力反対~。」

「あんたが余計なこと言うからでしょ!」

「俺の美しい顔に傷が残ったら責任とってよね~。」

「私の方が100倍美しいから。」

二人が同じ顔で睨み合っているので、まるで鏡を見ているみたいだ。『同じ顔だろ。』と言うと『『違う!!』』と重なった声が返ってきた。

「普段は俺とレミ、それぞれ新作出すタイミングもテーマもバラバラなんだけどさぁ、毎年クリスマスシーズンに出す商品はスペシャルってことでコラボしてるんだよね。"White & Black"とか、"Sun & Moon"とか、対照的なテーマで。今年は"Country & City" っていうコンセプトなんた。」

玲央は殴られた頬を痛そうに押さえながらそう言って近くにあったテーブルからA4サイズの紙をとって差し出してきた。シルバーアクセサリーを身につけた派手めの都会っぽい女子とナチュラルテイストのアクセサリーを身につけた素朴な田舎っぽい女子のイメージ図だ。
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