メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「ね~ムカつくでしょぉ~なんでいっつもあいつがさぁ~。」

がやがやと騒がしい均一居酒屋の座敷で、玲美は豊かな上半身をちゃぶ台に乗せて何度目かわからない台詞を気怠げに吐き出した。

「お前もう酒やめとけ。めちゃくちゃ弱いんだから。」

「飲まないとやってらんないのよ・・・てか、飲んでもやってらんないの。いっつもそうなんだもん・・・学生の時からいっつも玲央が一番、私は万年二番手。」

今日いきなり玲美に呼び出された。何でも、某ハンドメイド雑誌の表紙に玲美の作ったシルバーアクセサリーを使いたいと打診があったとのことだったのだが、打ち合わせの為玲美と玲央のアトリエを訪れた雑誌の編集者は玲央のナチュラルテイストのアクセサリーに心を奪われてしまったそうだ。

シルバーアクセサリー特集を組んでその特集ページはほぼ完成していたにも関わらず、それをナチュラルテイストのアクセサリー特集に変えてまで、その号に玲央のアクセサリーを起用したいと言い出したとのことだった。そうさせるほどの魅力が奴のアクセサリーにはあったということだ。

高いプライドが傷つけられ、元からあった炎のような嫉妬心もマグマのように手がつけられないほど燃え盛り、玲美は荒れに荒れていた。その結果、いつも強気な彼女が今にも泣き出しそうな顔で苦手な酒をあおっているのだった。
< 164 / 290 >

この作品をシェア

pagetop