メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「あいつは天才なのよ。特別何かをしているわけではないのに、斬新で皆を惹き付けるデザインを思いついて、それを形にしちゃうの。私の方がずっとずっと何倍も努力してるのに。雑誌だって毎号いろんな分野読んでるし、SNSで今流行ってるものもチェックしてる。美術展も毎月都内のも遠征しても行ってるし、大学や地方にある図書館をあたって色々な古い文献を調べたり、飛行機超苦手だけど海外に勉強しに行ったり。ほとんどの時間をそういうことに使ってきた。あいつってば、ゲームとかマンガとかビリヤードとかダーツとか釣りとか、いっつも遊んでばっかなのよ!?なのにすごい作品をパッと思いついて・・・SNSだって私はマメに更新してて、あいつは滅多に更新しないのにフォロワー数の差は歴然・・・こんなの不公平よ。」

玲美は赤とゴールドに彩られた長い爪で枝豆を皮から出して口に入れた。杏花の短い爪は無色だったが磨いてあるようで光沢があったなと思い出す。

「努力と才能は比例しない。努力は必ず実るわけじゃない。でも今まで玲美がしてきたことは決して無駄にならない。ちゃんと土の肥やしとなって根や茎や葉や花に栄養を与えてくれてその結果、実に繋がる。玲美が周りからの高い評価に甘んじず頑張り続けてきたの俺には分かるよ。」

「・・・。」

玲美は無言だったが表情が和らいだように見えた。
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