メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「18の時に知り合ったのに二人きりで出かけたのは初めてね。どうして今日来てくれたの?」

「それは・・・。」

「さっきはぐらかされたけど、あの子と上手くいってないの?」

「上手くいくも何も、元々俺とあいつは何でもないから。」

杏花とは結婚祝いの時計が完成した11月末から会っていない。元々用事がなければ連絡を取り合わない俺達だったので、メッセージのやり取りもあの日で止まっている。あれからまだ一ヶ月なのか。あいつと一緒にいた時間が遠い昔に感じる。

その更に一ヶ月前、ハロウィンの夜彼女に触れなかったのは、そうなってしまったらもう離れることが出来なくなると思ったからだ。

自分の気持ちを無理矢理抑えつけた為、心に大きな痛手を負った。その気持ちはいまだにカサプタになることがなく、じくじくと痛んでいた───無神経な俺は気づいていなかったが、俺は同じ傷を杏花にもつけてしまっていた。

時計が完成した日、『もう会うのは辞めよう。』などとわざわざ言葉にしたりはしなかった。元々俺達は付き合っていたわけでもないし、正直とてもじゃないがそんな辛い言葉を口には出来なかった。

今日玲美の誘いに乗ったのは何故だろう。杏花と離れて人恋しかったのだろうか。今までだって一人の期間が長かったし、恋人と別れたところでこんな寂しさを感じたことはなかったのに。
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