メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
*****

「奥が寝室・・・。」

すっかり酔っ払ってしまった玲美を家まで送ってきた。隣に住む玲央は留守のようだ。鍵を開けて玄関に入るところを見届けて帰ろうと思ったが、ドアが閉まる途中でその場に座り込みそうになる彼女の姿が見え、思わずドアを開けて体を支えてしまった。真っ赤な顔をした玲美を寝室のベッドに座らせる。

「水飲んだ方がいいぞ。入れてくるから。」

キッチンに向かおうとすると手首をぐっと掴まれる。

「・・・さっきから思ってたけどこの時計いいわね。見せて?」

「ああ。」

氷をイメージした腕時計だった。文字盤は透明で、透けて見える中の部品が氷に包まれて時代を超えてしまった、というストーリーがあった。バンド部分は大きめの立方体の透明ビーズを繋いだものだ。時計を外そうとすると玲美にそれを制された。

「つけたままで隣に座って見せて。つけているところが見たいのよ、職業柄。」

それもそうかと思い隣に腰かけると玲美は俺の腕を持ち上げ時計をしばらく色々な角度から見ていた。それからふいにその視線を俺の顔に移した。
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