メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
明日は卒業式。『卒業式の後会えないかな?』昨日のバイトの後店長から言われた。

『友達と最後の思い出作りするとかならそれ終わってからでいいから卒業祝いさせて。可愛い妹の袴姿も見たいし、早咲きの桜が咲いてる穴場の場所があるから見に行こうよ。俺仕事休みだし何時でもいいから連絡して。夜桜でもいいし。』

店長といることが嫌なわけでは決してないし穴場の桜も気になったけれど、心の中でモヤモヤした気持ちがかなりの存在感を誇っていた。わかっている。本当は桜を観るなら『兄』よりも友達よりも親よりも暖人と一緒に観たいんだ。別に穴場じゃなくていい。お花見なんかしなくても歩きながらだって電車の中からだって。

卒業式の後、暖人に気持ちを伝えに行こうと思っていた。気持ちが届かなくて落ち込んだら店長は優しく慰めてくれるだろう。『支えるから。俺に甘えて?』彼の甘い言葉を思い出す。ついついその言葉に寄りかかりそうになってしまうが、それでは駄目だと思い直す。

『行きます。』と言ったわけではないけれど、やはりきちんと断ろうと思っていると部屋のドアがノックされた。『はい。』と返事をすると、ゆっくりと開いたドアからお母さんが顔を出した。
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