メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
色とりどりの袴や初々しいスーツ姿の卒業生達とその家族、後輩と思われる学生達。輝かしい門出にふさわしいよく晴れた青空の下、皆その空に負けないくらい晴れやかな顔をしている。

杏花の大学のホームページで調べて知った卒業式の日。俺は大学の正門から道路を挟んだところにある自動販売機の横に出来るだけ目立たないようにして立っていた。緊張しているし、居心地が悪くて落ち着かない。不審者だと思われていないだろうか。

大学名が書かれた門の前で笑顔で記念撮影をする卒業生達や、門から出てくる人達の中杏花を探す。以前卒業式に着る衣装の写真を見せてもらった。小振り袖はクリーム色に淡い水彩タッチで杏の実が描かれたもの、重ね衿と袴下帯は『今様色(いまよういろ)』という平安時代に流行った淡い紅色、袴はえんじ色で下の方に斜めに桜の刺繍が入ったものだった。髪はおろして祖母が編んでくれるというアイボリーのレースリボンをつけ、足元はブーツではなく草履を履くと言っていた。

しばらくしてその衣装を身に(まと)った杏花が友達と思われる女性達と共に出てきた。若くて綺麗な女子大生がたくさんいるはずなのに彼女だけにスポットライトが当たっているように見える。白肌に着物が映えていて信じられないくらい可愛らしくて美しくてぼうっと見とれてしまった。
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