メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「はっくしゅん!」

「衣緒!?」

突然、言葉のない甘い会話を遮るようにお母さんとお父さんの声がした。

「ごごご、ごめんなさい、花粉症で・・・司会だからマスクしないでいたから・・・。」

茂みの後ろからお母さんとお父さんが気まずそうに現れて、暖人が慌てて体を起こし私のことも起こしてくれる。

「い、いつからいたの!?」

「杏花達が来る前からいたよ・・・俺達って相変わらず存在感ないよな。俺一応社長なんだけど。」

「私はそうだけど、リンくんはそんなことないよ!ほら、今はプライベートモードだったから・・・。」

話している二人の後ろから暖人のお母さんも現れた。授賞式の前、彼が『今一緒に暮らしてる彼女だよ。』と私を紹介してくれるとお母さんは『やだ!暖人そんな怖い顔なのに、なんてかわいいお嬢さんなの!』といきなりハグしてくれたのだった。

「・・・か、母さんまで・・・。」

放心状態の暖人と対照的に彼のお母さんはホッとした感じだった。

「いや~、彼女さんのご両親に会えて良かった~。うちはあたし一人だけだから、いつか息子達が結婚する時の両家の顔合わせ緊張しそうで気が重かったんです。元々そういう物々しいの苦手だし。」

「私もそうです。お母様さえよろしければ今日この後、カフェで軽くお茶でもしませんか?」

お母さんが鼻をぐずぐずさせながらそう言うと暖人のお母さんはパッと手を挙げた。

「賛成!そのくらいが気楽でいいです。あ、暖人、あんたのマンションの下にベーカリーカフェあったでしょ。素敵なお庭がある。あそこはどう?」

「ん!?もしかしてそこって・・・。」

お父さんが驚いた顔で言うと、お母さんもハッとした表情になった。
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