メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「本当は今日、お父さんとお母さんも来て一緒に泊まりたかったみたいなんだけど、前から仕事が入ってたから来られなかったんだよね。」

二人で広げた布をパーテーションに被せながら杏花が言う。

東京駅で待ち合わせをして朝6時台の新幹線でここまで来た。朝が苦手な杏花は席についた途端『昨日焼いたんだ。』と言って手作りのパンを俺に差し出してすぐに眠ってしまったが、会場に着くと元気に復活して、宅配便で送っておいた作品やディスプレイの為の小道具が入った段ボールを次々と開封していた。

「もしかして両親共同じ会社なのか?」

「うん、そうなの。」

「ふーん、何の会社・・・?」

言いかけて、彩木さんも娘の店にも俺の店にも来たかったけれど、仕事があって行けなくて残念だと言ってくれていたことを思い出す。

ハコイリギフトは毎年新しい商品となる作品を探す為にこのイベントに社員を行かせているらしい。いつもは若手社員が行っているが今回は彩木さんも参加して、同時に俺の時計を買いに来たいと言っていた。『契約を結ぶ前に買ってしまうとビジネスの為に買うみたいで嫌だから。』そう言っていた彼女の姿が目の前にいる杏花に重なった。まさかとは思うけれど一応聞いてみる。

「お前の親が働いてる会社ってもしかして・・・。」

「「ハル!!」」

問いかけた時、遠目でも相当目立つ男女二人組に声をかけられた。女が高いヒールを履いているので身長は同じくらいに見える。

男はブルーが強めのシルバーブルーの癖髪で目の上ギリギリまでの長い前髪、女は赤に紫メッシュが入ったストレートのセミロング。それに包まれた二人の顔の顔面偏差値は異常なほど高い。

一切の妥協なくひとつひとつ完璧に作られたパーツが計算され尽くしたバランスで並んでいる。一切の無駄も隙もなくて怖いくらいだ。しかもその顔が2つ並んでいるのだから相当な破壊力である。
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