メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「ええっ!?」

俺は思わず大声を上げた。

イベント会場を出て送迎バスに乗り今日泊まるホテルに到着しチェックインをしようとすると、部屋は一つしか予約されていないと言われたのだ。

「お前の母親が予約してくれたんだよな?」

そう確認すると杏花は表情を変えずに頷いた。

───いや、ちょっとは驚けよ。こいつって本当、動じないと言うか・・・いや、今はそれどころじゃない。

「葉吉杏花様のお名前で、一部屋大人2名様で承っておりますが・・・。」

杏花と対照的にフロントスタッフの若い女性はかなり動揺した顔をしている。

「それ間違いです。他の部屋空いてませんか?」

「大変申し訳ありませんが、あいにく本日は満室でして・・・。」

詰め寄る俺の顔が怖かったのか、彼女は怯えた表情になった。

「・・・とりあえず部屋に行って考えようよ。」

杏花に言われ、とりあえず一部屋のみ───大人2名で───チェックインを済ませて部屋に向かった。


「・・・確かに一人用の部屋じゃないな。」

部屋を見回す。大きなソファとローテーブルが置かれた洋室スペースにはボタニカル柄のカバーがかけられたツインベッド、5人くらい寝られそうな和室スペースには琉球畳が敷かれ、時計やポット、空気清浄機等の備品も凝ったデザインかつ部屋に馴染むものだった。
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