フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
喫茶店を出た後、レイと二人で何となく辺りをぷらぷらした。
古本屋を覗いたり、神社がわりと多かったり。皇居も近いから、自然が多くて癒される。
ゆっくり、ゆっくり。二人で並んでいるだけで……なんでこんなに楽しくて、満たされるんだろう。
レイがいつの間にか私の手を握って、意地悪な笑みを浮かべてる。真っ赤な顔をしてるだろう私は、うつむいて彼の顔を見れないけど。
私の遅い歩みに、彼が合わせてくれている。自然な思いやりに、指先から幸せを感じた。
そのうちにお腹が空いて、何かを食べようか?とベンチで座り相談している時。唐突に小椋さんが駆け込んで小声で報告してきた。
「レイ王……もとい、社長。今すぐ移動してください! ミレイ王女が……」
「わたくしが、何かしら?」
聞き覚えのある声に振り向いて見れば、寒空なのに露出の多いドレスを着たミレイ王女の姿が。紫の身体にフィットしたタイトなデザインは、彼女によく似合うけど。
周りを見ても、ボディーガードやマリアさんの姿がない。それなのに王女様は変わらず仁王立ちしていて……日本のその辺りの広場にすごく場違いな雰囲気だ。
……で。
「アンタ、誰?」
本気で怪訝そうに、レイが王女様に言いはなった。
「レイ王子、惚けるのもいい加減になさいませ!従妹で婚約者の、ミレイ・フォン・ファザーンですわ」
「知らない」
バッサリと、レイはミレイ王女を切り捨てた。
「ファザーン王家と国は、オレを棄てた。どころか死にかけても助けなかった……それが、今さら何?」