フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
私の独白を聞いても、レイは何の反応もない。
ただ「そうか」と言って、窓の外を眺めただけで……まるっきり上の空。 今後私がどうしようがどうなろうが、どうでも良さそうに見えた。
そして。
「……オレに止める権利はない」
そんな決定的なひと言を言われたら、もう離れるしかないじゃない。
まるで超一流ホテルにいるような豪華な施設と室内。一流シェフが腕を振るうフルコースの病院食。快適に過ごせるはずのそれが、今はただ虚しくて悲しい。
所詮、私は庶民だ。身の丈に合った幸せを掴むべきだ……。
着替えを届けに来たお母さんへ、私は思いきって頼んだ。
「お母さん……清美おばさんって顔が広かったよね?お見合い……できるか訊いてもらっていい?」
「え、どうしたの一体? そりゃ頼めるけど……真宮さんとケンカでもしたの?」
「……ケンカできる、本当の仲だったら良かったんだけどね……」
ついつい、辛くてお母さんの前で泣いてしまった。
真宮さんと離れると決めて、彼にどれだけ恋をしてたかわかってしまったから……。
「お母さん……私、帰る。愛知に帰る。二度と東京には来ない……」
「……そう」
お母さんはなにも聞かず、ただ黙って私を抱きしめてくれた。
窓から見えた夕焼けは、憎らしいくらい綺麗だった。