フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約


入院した翌日、大挙してみんなにお見舞いに来られた。

仲が良くないと思っていた職場の人まで来てくれて……驚いたけど。付き添ったレイがちゃっかり「婚約者です」と自分を紹介するものだから、明日には更に私とレイのことが広まってる……とハラハラしてしまう。

「レイ、なんでそんな嘘をつくの?」
「嘘? 何が?」

本気でわからないらしく、首を捻ってるけど。私はため息を着くしかない。

「だから……私の婚約者ってこと! こんなにみんなに広めてどうするの?
私たち……最初から偽りで契約しただけでしょ!
終わりが決まってるのに……なんで」

泣きたくないけど、泣きたくなる。

好きなのは、結局私だけ。いつもいつも片想いで……本当に幸福な恋をしたことがない……。

「……いいよ、もう。所詮、私は男性から利用されるだけのつまらない女だもの……どれだけ好きになっても……想いを返してもらえない……」

こんなグジグジした泣き言は言いたくないのに、虚しくて悲しくて……恨み言の一つも言いたくなる。

「いい。そのうちお母さんに頼んでお見合いでもする……なん十回かすれば……奇跡的に、私でも良いっていうひとがいるかもしれないから……愛されなくても……結婚して親を安心させてあげようかな」

ずっと、ずっと心配させた親不孝な一人娘。独りぼっちより、結婚して安心させてあげよう……。そう思った。


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