フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
「ーー結婚は、ふりだけでいい」
「え?」
彼は先ほどまでの無表情と違い、口元に笑みを浮かべてたけれどもーー
「アンタはあの友達とやらに、恋人がいるとでも言ってきたんだろ?その相手役として、オレを利用すればいい」
なぜ、そんなことを言えるんだろう?
「どうして、そこまで知っているんですか?」
「生憎あのレストランは行きつけでね。悪いが、最初から最後まで一部始終を見聞きしたんだ。オレはこう見えても、人の機微は聡いつもりだ。アンタがあの男に利用されてきたことも、全て親友に頼りきりな甘ちゃんだろうこともわかった」
そして、私に洗いざらい喋らせて把握したーーと。シレッと言う彼を、初めて叩きたいと思った。
「ひどい……わ、私をからかうために……わざわざ追いかけてきたんですか?」
再び頭に血がのぼり、怒りのあまりにぶるぶると全身が震えた。
何もかも恵まれた彼にとって、平凡な失恋女をからかうのは、ただの暇つぶしなんだろう。
でも……でも!
私にとっては、この3年は幸せだったはず。いくら恋人でなかったとしても、かけがえのない時間だった。
香澄とのことだって。
小学生から20年近く一緒にいるんだもの。そんな薄っぺらい理解で否定なんてさせない!