フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
「だって……さくらがこんなに幸せそうに笑ったの、初めて見るんだもの。親として応援したいのは当たり前じゃない」
(え……私……笑ってた?)
お母さんに言われるまで気づかなかったけど……私、笑ってたの?
まさか……。
けど、意識すれば確かに口元が緩んでたのがわかって、一気に恥ずかしさが込み上げてきた。
「ね、それに……東京に行けるなんて何年ぶりかしら。さくらが卒業した時以来じゃない。楽しみね」
(お母さん、もうちょっとオブラートに包んでよ)
お母さんの本音駄々漏れな言葉で、呆れた気持ちになったけど。
「そうだな……一方的な決めつけはよくない。私もどうかしていた。悪く思わないでほしい」
お父さんが真宮さんに謝って、ピリリとしていた空気が和らいだ。
「いえ、ご心配はごもっともです。信用を得るのに時間がかかるのは仕方ありません。なので、これから長いお付き合いで知っていただければと思います」
そう頭を下げた真宮さんだけど……
その大きな手が離れた時、名残惜しく感じたのはどうしてだろう?
彼に触れられただけで、大きく包み込まれるような安心感を感じたことも。
その時の私は、いくら考えてもわからなかった。