フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
「……さくら、どうしたの?顔色が悪いけど、大丈夫?」
香澄の声でハッと我に返ると、彼女は心配そうにこちらを見ていた。
「もしかして、こういう場所合わなかった?ごめんね。仕事帰りに一番近いレストランがここだったから。
気分が悪いなら、ちゃんと言って。あなた人混みに酔いやすいんだし……」
はい、とレモン水を手渡してくれる香澄は、何よりも友達の私を優先してくれる。いつも通りに。
「香澄、友達もいいけど俺にも構ってほしいな」
「いい年した大人の男が何を言ってるの。さくらは色々弱いんだから……それがご不満なら、プロポーズはお断りします」
和彦からの甘えを、キッパリはね除けるのも流石香澄だ。
間違いなく彼女は知らなかったんだ 。
私が人知れず付き合ってた恋人が、目の前にいる和彦だったことも。
和彦が二股をかけてたことも。
私が香澄と和彦が付き合ってたことを知らなかったように。
きっと、私と会うときに和彦が言ったように。“会ってるのを知られるのは照れくさいから、みんなに内緒な。同僚にからかわれたくねえんだ。探られたりマウントもめんどくせえし”と いう言葉を真に受けてたんだ。