フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
「悪い、遅れた」
「仕事なら仕方ないわよ。時間がないから早く注文して」
香澄から根掘り葉掘り訊かれそうになった時、和彦が慌てて駆け込んできてドキッと心臓が跳ねた。
思わずうつむいて、膝の上に置いた両手をぎゅっと握りしめた。
(やっぱり…………怖い)
バクバクと、心臓が嫌な音を立てる。
冷や汗が背中を伝い、体が震えてきた。
でも、と自分に言い聞かせる。
(和彦は……最低なんだから。私を数年も磨り減らした、人として最低なアッパラパ~のアホ男)
真宮さんが和也を罵った内容を繰り返し心のなかで呟くと、不思議なことに気持ちが落ち着いてきた。
(うん、大丈夫……もう、平気だ)
深呼吸を数回して息を落ち着かせてから、勢いよく顔を上げる。
すると、なぜかジッと和彦が私を見ていて。なんだろう?と首を傾げる。
「あら、さくらったら。こんなところにキスマークなんてつけちゃって。昨夜はお楽しみだったみたいね」
ニヒヒヒ……なんてキラキラした目でニマニマ笑う香澄が怖い……。というか香澄が指差したと首筋。確かに昨夜真宮さんが口づけたところで。カアッと顔が熱くなった。
「え、別に……私のドジで真宮さんが……だから、シャワー浴びせたり服を脱がせたくらいだけど……寝ちゃったし」
香澄は誤解してる!と言いたくて、慌てて説明を試みたけど。逆に誤解を深めてしまってた。
「ちょ、和彦!聞いた!?さくらったら、ラブラブな毎日だよ~わたしらも頑張らないと」
「な、なにがだよ!?おい!」
香澄は和彦の腕に自分の腕を絡ませ、体を密着させたけど。
不思議なことに、それを見ても心が乱れない自分に驚いた。