フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約

「悪い、遅れた」
「仕事なら仕方ないわよ。時間がないから早く注文して」

香澄から根掘り葉掘り訊かれそうになった時、和彦が慌てて駆け込んできてドキッと心臓が跳ねた。

思わずうつむいて、膝の上に置いた両手をぎゅっと握りしめた。

(やっぱり…………怖い)

バクバクと、心臓が嫌な音を立てる。

冷や汗が背中を伝い、体が震えてきた。

でも、と自分に言い聞かせる。

(和彦は……最低なんだから。私を数年も磨り減らした、人として最低なアッパラパ~のアホ男)

真宮さんが和也を罵った内容を繰り返し心のなかで呟くと、不思議なことに気持ちが落ち着いてきた。

(うん、大丈夫……もう、平気だ)

深呼吸を数回して息を落ち着かせてから、勢いよく顔を上げる。
すると、なぜかジッと和彦が私を見ていて。なんだろう?と首を傾げる。

「あら、さくらったら。こんなところにキスマークなんてつけちゃって。昨夜はお楽しみだったみたいね」

ニヒヒヒ……なんてキラキラした目でニマニマ笑う香澄が怖い……。というか香澄が指差したと首筋。確かに昨夜真宮さんが口づけたところで。カアッと顔が熱くなった。

「え、別に……私のドジで真宮さんが……だから、シャワー浴びせたり服を脱がせたくらいだけど……寝ちゃったし」

香澄は誤解してる!と言いたくて、慌てて説明を試みたけど。逆に誤解を深めてしまってた。

「ちょ、和彦!聞いた!?さくらったら、ラブラブな毎日だよ~わたしらも頑張らないと」
「な、なにがだよ!?おい!」

香澄は和彦の腕に自分の腕を絡ませ、体を密着させたけど。

不思議なことに、それを見ても心が乱れない自分に驚いた。
< 46 / 139 >

この作品をシェア

pagetop