フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
ふわりと白いものが落ちるのが、ガラス越しに見えた。
「……雪だ」
ひと粒落ちたのをきっかけに、ふわふわとした雪がゆっくりと地上へ落ちてゆく。
「あの……なにか……私にもプレゼントさせてください」
真宮さんがあまりにも色々してくれるから、返しきれないかもしれないけど。リクエストをお願いしたら、彼はこう言った。
「ワルツを」
「え?わ、私……経験ありませんけど」
「大丈夫だ。オレが教えてやる。誰にも見られないよう貸しきったしな」
「えっ……」
真宮さんのとんでも発言に気を取られてるうちにいきなり背中に手を当てられ、右手を組んでる、いわゆるホールドという姿勢になる。
「オレがリードするから、言う通りに足を運べばいい」
「えっ……は、はい」
(あ、足を踏みませんように)
願いも虚しく、踏み出した一歩目から思いっきり真宮さんの足を踏んでしまって……
彼に、思いっきり笑われた。
「ガチガチに緊張し過ぎだな」
「も……もう、笑わないで」
それでも、彼が笑ったことで不思議と緊張がほぐれて。ゆっくりとゆっくりとステップを踏んでいるうちに、何だか楽しくなってきた。
「そうだ」
人が褒めてくれたから、すぐに調子に乗るのが私の悪いところ。
だけど、真宮さんの巧みなリードのお陰で……まるで舞うように回ることができる。
静かに降る雪の、ホワイトクリスマス。
二人っきりでのワルツは、まるで別世界にいるようだった。