フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
その後、57Fの展望台へ昇った。
まるっきりあの夜と同じ。
不思議なことに、また誰一人いない。
東京の美しい夜景をガラス越しに真宮さんと眺めた。
「……あの……ありがとう」
「何が?」
「その……色々と」
迷惑をかけた自覚はある。
なのに、真宮さんはいつも通りに飄々とした雰囲気で。まったくダメージは無さそうだった。
「いい。アンタを選んだ時から想定内だ」
そんなふうに、小憎らしいことを言うから。これ以上何も言えなくなる。
「火傷は……」
「別に、こんなのは痛みのうちには入らない」
そう言った真宮さんは、腰に手を当てた。一番ひどい傷痕がある辺りだ。
「……3つの頃には生死に関わるケガをした。それがきっかけで、乳母の故郷であるこの国へ母上とともに亡命したんだ」
ぽつり、と呟く彼は…………あの時と同じ。悲しげな瞳をしていた。
ズキン、と同じ場所が痛むと感じたのは気のせい?
思わず、私は後ろから彼に抱きついてた。
「よかった……あなたが生きていて……それだけで私は嬉しいです」
「…………そう」
素っ気なく、そう返されたけど。彼の大きな手が私の手に重ねられて。その温かさに、涙が出るほど嬉しかった。