フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約


真宮さんと書斎に向かったお父さんだけど、一度行ってからなかなか帰ってこない。
マンションに来たのが昼すぎの午後2時なのに、今はもう5時になってる。

お母さんは苦笑いして、リビングのソファから立ち上がった。

「これは完全に入り浸っちゃってるわね。さくら、今のうちにお買い物しに行きましょ。夜ご飯作らないと」
「うん、そうだね」

お母さんの提案に同意した私も、外出の支度をした。
真宮さんは外食にしようと言ってくれたけど、彼のことだからビルディングの高級レストランか、ショッピングモールの一流寿司レストランにでも行きそう。
どちらも一人前数万円なんて当たり前な世界だから、一人1000円ですら高いと思ううちの感覚とはかけ離れ過ぎてる。

手料理なら気負わず好きなものが食べられるし、アットホームな雰囲気で真宮さんと両親が打ち解けられそう。

(……って。なにそこまで考えてるの、私は。真宮さんとは本当に結婚する訳じゃないんだよ。期待させたらそれだけ後が辛くなるじゃないの)

そうだ。お互いにあくまでも都合よく利用しあっているに過ぎない。
真宮さんがたまに甘い雰囲気(ムード)を出すから、勘違いしそうになるけど。

もっと、気を引き締めないと。

そう思うと同時に、わざわざ東京に来てくれた両親を騙していると思うと胸がずきずきと痛んだ。
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