フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約

(えっ?)

自分が考えたことに、愕然とした。

(身分の差って……どうして、そんなこと考える必要があるの? 今だって偽りの恋人に過ぎない。いずれ無関係になる人なのに)

それに、“行かないで”なんて。言いたくなる理由なんて……あるはずない……。

そのはず、なのに。

(馬鹿なことを考えていないで、早くマンションへ帰らなきゃ……)

そう自分で自然に思っていたことにも驚いた。

今の私にとって、帰る場所は真宮さんのマンションなんだ。

まだたった2週間と一緒に暮らしていない真宮さんとの日常が、これだけ自分の中で当たり前になっていたなんて……。

(どうして……?私は……真宮さんとどうこうなれないのはわかってるはずでしょ)


ぐるぐる答えが出ない思考を繰り返しながら、レジデンスに向かって歩いてると。お母さんが「あら?」と怪訝な声を上げた。

「マンションの前に誰かいる。なんだかこっちを見てるみたいだけど……さくら、お知り合いかしら?」
「え?」

レジデンスに引っ越したことは、香澄にだけ話してある。結婚前に同棲という名目なんだけど……。

あれ? だけど、お母さんなら香澄を知ってる。だから、そんな言い方はしないはず。

今の時期の夕方6時過ぎは完全に夜だけど、ベリーヒルズはあちこち照明が設置されてる。

(一体誰だろう?)

お母さんと歩いて近づいていくうちに、その黒いシルエットが誰かわかって思わず足が止まった。

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