フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
レイの部屋に入るのは初めてだった。
掃除は専門業者がしているし、今まで特に用事もなかったから。
フローリングの床にシンプルなラグが敷かれ、後はベッドと机……。棚がひとつにクローゼットくらい。あまり生活感がない。
それにしても、なぜレイは私をここに?
ドアを乱暴に閉じた彼からは、怒りの気配を感じる。何を怒らせたんだろう?わからない……。
でも、きっと私が原因だ。
だって、私は……いつもいつもドジばかり。
一生懸命になにかしても、人とずれてしまって。人の気持ちを推し測ることも、対応も苦手で。呆れたり怒らせたりばかりだ。
「……あの……ごめんなさい」
「…………何が?」
唸るような声音で、やっぱり怒っているとひしひし伝わってきた。
「きっと、私がドジだから怒ったんですよね? 」
「ああ、そうだな」
そう呟いたレイは、唐突に私の肩を掴むとそのまま壁に軽く押し付け、空いた手で壁を叩いた。
「ーーあのヤローに、逢ったのか?」
あのヤロー? 私がわからなくてビクビクしていると、レイは信じられないほど顔を近づけてきた。
「佐々木和彦……」
レイがその名前を呟いた時、サッと顔色が変わったのが自分でもわかった。