フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約

「うおっほん」

お父さんの咳ばらいで、そういえば目の前に両親がいたことを思い出して。許されるなら、この場から逃げたくなった。

「あらあら、ご馳走さま」

不機嫌なお父さんと違い、お母さんはクスクスと笑ってお父さんと真宮さ……レイのお茶を用意した。

「そういえば、佐々木さんは何のご用事だったのかしら?」

お母さんがぽろりと出した話題に、隣に座ってたレイの指がピクリと動いたのが見えた。

「佐々木さんが、どうかしましたか?」
「夜ご飯の食材を買いに行った帰り、マンションの前にいらっしゃったのよ。香澄ちゃんの婚約者なのに、なぜここに?よくわからないわね」

お母さんが言葉を重ねる度に、なぜかレイの空気が重くなっていくのを感じた。

(真宮さ……レイは、和彦が嫌いなのかな?)

そうとしか思えないと呑気に考えてると、いきなり彼が立ち上がって驚いた。

そして、私の手を掴むとにっこり笑って挨拶をした。

「お先に失礼します。お二人はどうぞお風呂で暖まり、お部屋で寛いでくださいね」

不気味なくらい愛想よく笑ってのが、なぜか怖い。

「あらあら、まあそうよね。若いし付き合いたてなら、二人っきりの時間も必要よね」

お母さんは嬉しそうにニコニコしてて、お父さんは不機嫌そう。

「あ、そういえば真宮さ……レイ、お父さんと約束」
「それはいいから、行きなさい。どうやら話し合いが必要なようだからな」

お父さんまで意外なことを言われて、戸惑いながらもレイのあとについていった。

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