長い梅雨が明けた日
「久しぶりぶりに見たけどまだ怖いのかよ」
笑いながらついて来る河野を無視して歩くけど優弥までもが余計なことを言い出す。
「あー、そろそろそんな時期か。そういや最近あのオッサン見ないな」
「あのオッサン、名前なんて言ったっけ?白井わかるか?」
「言わないっ!!」
間髪入れずに答える。
わかるけど言わないっ!
怖い話をする仕事をしてる人なんて見たくないし名前も言いたくないっ!
「えー?気になるだろ。なんだっけ?」
「……。あ、稲」
「優弥っ!!」
掴んでいたシャツを思いきり引っ張った。
「がっ!…って、理乃、てめぇ」
喉を手で抑えた優弥が振り返って私にデコピンした。
「もう1回やったら置いてくからなっ」
「ゆ、優弥がそんな話するからでしょっ!」
「ぷっ。優弥サンキュー、思い出した」
再び笑う河野を睨もうとすると、河野が私の頭上越しに何かを見ていた。