長い梅雨が明けた日
「あ、猫」
河野の声に反応して振り向くと何かが素早く動く影が見えた。
「ぎゃあぁーーーっ!!」
「ぷっくくくっ…」
「…理乃、うるせぇよっ」
頭上で笑いを堪える声とウンザリした優弥の声。
「くっ…。俺言っただろ。ただの猫だよ」
まだ笑ってる河野の声を聞いて恐る恐る後ろを振り返ると、白っぽい猫の後ろ姿が見えた。
「猫がフェンスから飛び降りただけだ。
いちいち騒ぐなよ」
「そ、だ、だって優弥が変な話するから」
「元はと言えば俺じゃなくて健二だろ。
いいからさっさと帰るぞ」
少し苛つくような優弥の声。
そうは言っても吃驚しすぎて心臓がバクバクしてるのに…
「…平気か?」
肩に軽くポンッと手が置かれただけで身体がビクッ大袈裟に反応する。
…無理。
足が動かない…。
でも帰らないと…。
どうにか足を動かそうとしていた時。
「あれ?理乃ちゃんどうしたの?」
聞こえた声が優弥でも河野でもなかった。