きみは微糖の毒を吐く



見覚えのある制服、肩くらいの長さの茶色い髪。真っ赤なリップに濃いメイク。

セーラー服の短いスカート。
体が一気に冷えていく感覚。




「……梨乃、ちゃん」


「なに、もう新しい彼氏できたの?」




絢斗くんはマスクもしているし前髪で目も隠れているから、彼女は私の隣にいるのがモデルの絢斗くんだとは気付いていないみたいだ。


棘のある言葉に、何も言えずにうつむく。





「彼氏は知ってるの?うちの学校のこと」



「っ……」



梨乃ちゃんはにやりと笑ってから絢斗くんに近づく。




「ねえ、乙葉が人の男取ったの知ってる?」





やめて、絢斗くんに変なこと言わないで。

止めたいのに声が出なくて、泣きそうになりながらきゅっと唇を噛む。




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