1日だけの恋~10月25日夜完結~
「大丈夫です。全て考えてありますから。少し歩きましょう」
男に促されて舗道を並んで歩いていく。手は繋がれたままだ。

嫌じゃないが、このまま従っていいものやら。

手は振り払う方がいいだろうか。

それじゃ乱暴な感じがするし嫌われかねない。

私の本来の目的を達成するためには、行動をよく考えないと。

「でも……」
嘘をつくのが、いくら他人のご両親とはいえ忍びない話でオレオレ詐欺師にでもなった気分だ。だが、これは男に近づける願ってもないチャンスだ。

「心配には及びません。君なら大丈夫。きみがいいんです。きみに出会ってきみが適任だと直感したんだ。だから、こうして頼んでる」

「はぁ」
正直いうと困っていたし、微妙な気持ちになってもいた。
詐欺師まがいのことをやるのに、君が適任だと言われても全く喜べない。

男が持ちかけてきた話は唐突だ。

だが、思ったよりも早く男に近づけているのは確かだ。


「僕の恋人の芝居を頼む相手にきみを選んだ理由があります」
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