1日だけの恋~10月25日夜完結~

「彼にあなたのことを『私の彼氏』だと思わせてください。…つまり私の彼氏のフリをして、ここにいてもらって、そのまま一緒に出てもらうことは出来ませんか?もちろん、ご迷惑でしょうけれど……もうどうしたらいいかわからなくて」

早口でまくし立てた私の説明が可笑しかったのか、男はちょっとだけ口元に白い歯をのぞかせた。
「きみの彼氏のフリ……ですか?ふっ…」

笑われても構わない。

「…はい、あの…でも、もちろんっ貴方と私は実際には赤の他人ですし…その…貴方には迷惑な話なのも十分に承知しておりますが。ここはひとつ人助けだと思って私に力を貸して頂けないでしょうか?」
突然で非常識とも思える願い事をする私の顔をジッと眺める男。

「……」
少し沈黙して何やら考えている。

沈黙が怖かった。

断られたらおしまいだ。

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