1日だけの恋~10月25日夜完結~
「斗真のフィアンセよ」

フィアンセ?

フィアンセの存在は知らなかった。
いつも頼んでいる探偵の先月末の報告書には書いてなかった。

「いつから……ですか?」

「いつフィアンセになったかってこと?
ちょっと
そんなことをあなたに言う必要あるの?」

女性は目をつり上げて睨んできた。



「まあ、いいわ。先月末よ」

時期的に報告書に間に合わなかった内容だったのか。

そんな大切な人が綿貫さんにいるなら、話は変わってくる。

誰かにとって大切な人を私は奪いたくない。

それに綿貫さんには幸せになってもらいたい。

その邪魔は決してしたくない。

綿貫さんがどんな気持ちで私を受け入れようとしたかわからないが、遊びだとしても、これはルール違反になる。

自分がしてもらいたくないことは、他人にもするべきじゃない。

「知らなくて……すいません。
すぐに帰ります」

素直に頭を下げる。
それしかなかった。


夢の世界から一気に奈落の底へ突き落とされた気分だ。

「そうして」

綿貫さんのフィアンセから冷たくそう言われた。

殴られなかっただけまし。

今は、そう思うしかなかった。
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