1日だけの恋~10月25日夜完結~
綿貫さんにはフィアンセがいる。

たった一度とはいえ、綿貫さんをお借りすることは不可能だ。

私のわがままで、生涯、耐え難い思いを抱えさせることになる。

私も苦い思い出となってしまう。私の計画は綿貫さんがフリーの間のみ許されることだった。

「どうして、部屋にいなかったんだ?」

綿貫さんは、私の肩に優しく手を置いて私の顔を覗き込むように近づいて見てきた。

「待ってろって言ったろ?ん?」

柔らかな笑顔になる綿貫さん。

綿貫さん、こんなときにそんな笑顔はずるい。

「ごめんなさい。やっぱり気が変わりました」

目を合わせられなかった。

言ってすぐに下を向いて大理石の床を見ていた。

「……怖くなったのか?それなら……」

「馬鹿でした。どうかしてたんです。綿貫さんにあんなこと頼むなんて……」

肩に綿貫さんの手の温もりを感じていた。

ようやく顔を上げて綿貫さんを見た。

「忘れてください。全部」

忘れてもらいたい。

恥ずかしいもの。下着姿になったことも綿貫さんに対する思いを語ったことも、全て忘れてほしい。

キスしたことも。
デートも。

昨日の出会いから今までの全て。
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