1日だけの恋~10月25日夜完結~
これは失神しないほうがおかしい。

ふらっときた私を綿貫さんが支えてくれた。

綿貫さんの腕のなかにすっぽり収まり、私は綿貫さんを見上げた。

「急いで戻ったのに……

きみはいなくなってて……
どれだけ心配してきみを思っていたと?」

こんな甘い台詞を言われるなんておもってなかった。


「今更……気が変わっただって?」

綿貫さんは苦笑いをしてみせた。

私をきちんと立たせてくれたあと、
両手を少し上げて

「降参だ。
きみみたいな女性は初めてだよ」

「……」

言うべき言葉がみつからない。

どんなに嬉しくても綿貫さんと二人きりでは、もう過ごせない。

綿貫さんも酷い。

フィアンセがいるのに、私に甘い言葉を囁くなんて。遊び人すぎる。

フィアンセに悪いとは思わないのかな?
綿貫さんは、噂通り遊び人だったのだ。

それでも、フリーなら決まった恋人がいないなら構わなかった。

私が望んだのは、たった一晩限りの恋人ってだけで、その気分だけで良かったのだから。


「完全に振り回されたな」


「ごめん……なさい」

「いいよ、もう。
ただ、どうして、またここに?」

もっともな質問だ。

綿貫さんとのことを諦めたなら、このホテルに用はないはずだと考えるのが普通だ。

「それは……」

何て言おうか口ごもっているときに

「真理亜さん」

と声がかけられた。
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