バイバイ、ベリヒル 眠り姫を起こしに来た御曹司と駆け落ちしちゃいました
「はい、なんでしょうか」と先輩がすぐに対応する。
「ノンアルコールのスパークリングワインを用意してもらったはずなんだけど、どこにあるのかしら。坂口長官におかわりをお持ちしたいんだけど、見当たらないのよね」
「はい、確かに手配いたしました。予備も含めて三本用意してあるはずです。あったよね、七海?」
「はい、先ほどは一本開けただけですので」
あたりを見回していた先輩が壁際の台車に駆け寄った。
「え、どういうこと?」
「どうしたのかしら?」と、奥様ものぞき込む。
台車の上には空になったボトルが三本並んでいる。
「申し訳ありません」と先輩が直角に腰を曲げて頭を下げる。「何かの手違いで誰かが開けてしまったようです」
「あらまあ、じゃあ、もう飲んでしまったのね」と、奥様が朗らかに笑い出す。「皆様すっかりご機嫌で、お酒かどうかもお分かりにならなかったのかしらね」
先輩が重ねて頭を下げる。
「ただいま手配して参ります」
「そう、じゃあ、お願いできるかしら」
「はい、直ちに」と、起き直った先輩が床まで伸びた衣装をつまみ上げながら嘆いた。「ああ、もう、この格好じゃ無理か」
さすがに、いくらラグジュアリーなベリヒルモールでも、ルネサンスのお姫様が買い物してたらまわりがびっくりするだろう。
「ごめん、七海、大至急下のお店で買ってきて。地下の食品フロアにあるリカー・ショップ」
よし、ここは私の出番だ。
「はい、行ってきます。あ、なんていう銘柄ですか」
「そのボトルを持っていけば分かるから」
なるほど。
私はすぐに会場を飛び出した。
エレベーターで地下へ下りると、食品フロアは買い物客でごった返していた。
人の間をすり抜けながら、酒蔵をイメージしたやや暗いリカー・ショップに駆け込む。
「こ、これ、ありますか?」と私は単刀直入にボトルを差し出した。
でも、店員さんの返事はあっさりとしたものだった。
「ああ、ル・セック・モンテーニュ・ブランのビンテージ・ヴァン・トゥドゥですか。これは在庫はありませんね」
ええ!?
どうしよう。
「ノンアルコールのスパークリングワインを用意してもらったはずなんだけど、どこにあるのかしら。坂口長官におかわりをお持ちしたいんだけど、見当たらないのよね」
「はい、確かに手配いたしました。予備も含めて三本用意してあるはずです。あったよね、七海?」
「はい、先ほどは一本開けただけですので」
あたりを見回していた先輩が壁際の台車に駆け寄った。
「え、どういうこと?」
「どうしたのかしら?」と、奥様ものぞき込む。
台車の上には空になったボトルが三本並んでいる。
「申し訳ありません」と先輩が直角に腰を曲げて頭を下げる。「何かの手違いで誰かが開けてしまったようです」
「あらまあ、じゃあ、もう飲んでしまったのね」と、奥様が朗らかに笑い出す。「皆様すっかりご機嫌で、お酒かどうかもお分かりにならなかったのかしらね」
先輩が重ねて頭を下げる。
「ただいま手配して参ります」
「そう、じゃあ、お願いできるかしら」
「はい、直ちに」と、起き直った先輩が床まで伸びた衣装をつまみ上げながら嘆いた。「ああ、もう、この格好じゃ無理か」
さすがに、いくらラグジュアリーなベリヒルモールでも、ルネサンスのお姫様が買い物してたらまわりがびっくりするだろう。
「ごめん、七海、大至急下のお店で買ってきて。地下の食品フロアにあるリカー・ショップ」
よし、ここは私の出番だ。
「はい、行ってきます。あ、なんていう銘柄ですか」
「そのボトルを持っていけば分かるから」
なるほど。
私はすぐに会場を飛び出した。
エレベーターで地下へ下りると、食品フロアは買い物客でごった返していた。
人の間をすり抜けながら、酒蔵をイメージしたやや暗いリカー・ショップに駆け込む。
「こ、これ、ありますか?」と私は単刀直入にボトルを差し出した。
でも、店員さんの返事はあっさりとしたものだった。
「ああ、ル・セック・モンテーニュ・ブランのビンテージ・ヴァン・トゥドゥですか。これは在庫はありませんね」
ええ!?
どうしよう。