バイバイ、ベリヒル 眠り姫を起こしに来た御曹司と駆け落ちしちゃいました
 すると、社長が私に顔を近づけてきた。

 え、何?

 ささやき声が私の耳をくすぐる。

「あとで俺のところへ来てシャワーを浴びろ」

 シャ、シャワー!?

 思わず飛び退く。

「セ、セクハラですか」

「勘違いをするな。VIPラウンジのシャワールームを使えと言っているんだ。そんな汗まみれだと、スーツに着替えるわけにもいかないだろう」

 それはそうですけど。

「私、クサイですか」

「かいでいいのか」

「嫌です」

 と、その瞬間、首筋に何かが吹きかけられた。

 ヒャッ!

 ふわりと甘く清涼感のある香りが漂う。

 身をよじった私を見て社長がニヤけている。

「な、な……」

 声が出ない。

 と、信じられないことが起きた。

 社長が私の手を取ったのだ。

 え!?

 今度こそ……セ、セクハラ!

 サイアク。

 エレベーターという密室で、他人の目がないからって。

 うちの会社の社長がこんな痴漢野郎だったなんて。

 私、この会社に入ってうれしかったし、社長のことも尊敬してたのに。

 こうやって社員のことをだましてオモチャにしてるんだ。

 セレブでイケメンだからって……。

 なんかもう、がっかりだ。

 我慢していた涙があふれ出す。

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