交錯白黒

私は無言でその場から走り去った。

自分の努力を踏みつけられ、自分が無能だと思い知らされているかのようだった。

私の中で何とか繋ぎ止めていた張り詰めた糸が、ぷつんと音を立てて切れた。

溜まっていた思いが洪水のように流れ出す。

目の奥から熱いものが突き破ってきて、それは生温い液体と嗚咽に変わる。


どうしてなの?

この努力が報われないのは何故?

きっと誰より努力して、誰より犠牲を払って、誰より、辛い思いをしてきた。

それを誰一人として、見てくれない、そして、結果としても表れない。

それに費やした、私のかけがえの無い瞬間は戻ってこないのに、それは只の時間の浪費として終わってしまう。

誰の得にもならない、人生の損失。

色のない、透明な期間。

悔しくて虚しくて、気が狂ってしまいそう。

何に対しての意欲も感動も沸かず、次から次へと私の心を侵してくるのは、忿懣。

人生は、十九歳で半分終わると言う人もいるらしい。

その殆ど全部をごっそり奪い、悪びれもせず追い詰めてくる両親への、止むことのない、黒い怒り。

そして……。

それを何も知らない癖に、私を見下して、全てを否定したあんた。

傷だらけの体に、あんたの言葉は塩を塗り込んだように深く染み込んだ。

痛い。

まるで、私という人間がこの世に必要ないと暗に、いや、はっきりと突きつけられた。

私はその日からあんたを呪いたいほど嫌いになった、嫌悪感を感じた。

怒りという、一種の麻薬に依存して。

全く不思議なものだ。

怒りに犯されるとこんなにも人は醜く残酷に、執着して残虐な仕打ちができるのだ。

あのくらい上からものを言えるあんたはそんなに立派な人間なの?

そして私は、そんなに駄目な人間なの?

……どうして皆私を傷つけるの?
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