交錯白黒
ヘアゴムは、私の手作りで、決して綺麗な仕上がりでは無いのに、あんなに嬉しそうに付けてくれると、私も嬉しい。
「ねえ、天藍ちゃん」
元気な彼女が、珍しく落ち着いた声になった。
「なあに?」
「ちーな、あと何回誕生日来る?」
千稲ちゃんは、自分のことを"ちーな"と呼ぶ。
それがまた、可愛らしいのだが、そんなこと思っている場合ではない。
……何回誕生日が来る?
それは、私にも分からないし、私の誕生日だってあと何回来てくれるのか、分からない。
でも、そんなこと、言えるわけが無い。
どう返事することもできず、ただ黙っていると、千稲ちゃんはにぱっ、と顔を輝かせて言った。
「あと3回くらい来てくれたらいいな〜って思ってるんだ」
千稲ちゃんの澄んだ笑顔が、陽に照らされるのを恐れている自分と対比して、格好悪くて嫌になる。
「……ちーなね、天藍ちゃんが大好きだよ」
何を悟ったのか、しっとりとした声色で言った。
子供は、時に純粋で危険な鋭さを発揮するから、侮れない。
少しギクリとしながら私も本心を伝えた。
「私も千稲ちゃんが大好きだよ」
千稲ちゃんはこくり、と頷くと、何かを思い出したように私から離れた。
「あ、ちーな、そろそろ行かないとお医者さんとママに怒られちゃう。またね!」
ぴゅーっ、と私に返事をする間も与えず帰っていった。
……千稲ちゃんだけは、守り抜く。
この身全てが破滅しようとも、守らなければならないのだ。
それだけの恩が、彼女にはある。
千稲ちゃんは、私と同じ病気だ。
今は退院しているが、ときどき入院しており、きっと今日は検査のためにきたのだろう。
千稲ちゃんの気持ちは、よく分かる。
私が一番、分かっている。
あの子のお陰で救われたことは、数え切れないほどにある。
いつも周りを照らす、太陽。
それを失ったとき、地球は急激に冷え、人類は滅亡する。
――絶対、守る。