ラグジュアリーシンデレラ
「ああ、ウチ、弟もいるんです。弟はまだ高校生だから、私が稼がないと。」

「ご両親は?」

「事故で亡くなりました。大学も中退して、働いています。」

こういうのは、さらっと言っておいた方が、重くならないんだよね。

「大変なんだな。」

「最初は大変でしたけど、慣れました。」


そうしているうちに、お寿司は完食。

うん、美味しかった。

「お腹いっぱい?俺のも食べる?」

「いいんですか?」

「いいよ。若い時って、たくさん食べるだろ。」

「じゃあ、少し貰います。」

もう井出さんの言葉に、甘えまくり。

次から次へとお寿司を食べて、卑しい子だなんて思われないかな。


「その歳で弟を養うって、偉いよな。」

ふと、井出さんがぽつりと言った。

「偉いよ。俺なんて、まだ独身だから、養う家族もいないって言うのに。」

「井出さん、おいくつなんですか?」

「俺?32歳。」
< 20 / 177 >

この作品をシェア

pagetop