密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

「ママ、どうして泣いてるの?」

 煌人が心配そうに、雛子の顔を見上げる。雛子は瞳を潤ませたまま笑った。

「大丈夫、悲しいわけじゃないの。……煌人とパパと三人でいられることがうれしすぎて、つい涙が出ちゃった」
「本当? またパパにギュッとしてもらったら?」

 無邪気すぎる煌人の発言に俺と雛子は一瞬目を見合わせ、それからクスクスと笑った。

「本当に大丈夫。ほら、行こう! あっ、パンダさんが風船くれるみたいよ」
「僕、青もらう!」

 煌人の関心はすっかり園内のパンダの着ぐるみ方へ向き、雛子はホッと息をついた。

 煌人を挟むように手を繋いだ俺たちは、息子の頭上でコソコソと話す。

「よかったな。ギュッ、をされなくて」
「ホントだよ。玲士なら人前とか構わずやりかねないもん」
「まぁな。でも、それはまたの機会の取っておくよ。今日の主役は煌人だ」
「うん。そうだね」

 そう言った雛子が、優しい眼差しで煌人を見下ろす。

 再会してから知ったその母性あふれる表情に俺も心穏やかな気持ちになり、ますますふたりへの愛情が募っていくのを感じた。

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