密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

 園内に入ると、まずは小さな子でも乗れるジェットコースターに俺と煌人で乗った。大人からすれば大したスリルはないのだが、煌人はジェットコースター自体が初体験。

 乗る前は興奮しながら走るコースターを眺めていたのに、いざ自分の番になると、緊張したように黙り込んでしまった。

「煌人、怖いか?」
「こ……こわくない」

 コースターが動き出す前に話しかけると、青白い顔で強がりを言うのでちょっと心配になった。

「パパが隣にいるから大丈夫だ。な?」
「うん。……そうだよね」

 まだ少し心許なそうではあるが、少し気を取り直して頷いた煌人。

 次の瞬間ガタンと音を立てて、コースターがゆっくり動き出し、煌人はきゅっと唇を噛んだ。

 そのうちスピードが出てきても、煌人はずっと踏ん張ったような顔でジッと耐えていて、悲鳴も笑い声も上げないのが逆に必死に見えてかわいかった。

 柵の外では雛子がスマホで写真を撮ってくれていたが、目線を合わせる余裕があったのはおそらく俺だけだろう。

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