アイツの溺愛には敵わない
時は流れて、土曜日。
「それじゃあ、行ってくるわね!明日の夕飯前には帰ってくるから」
「うん、気を付けて行ってらっしゃい」
「颯己くん、映結のこと頼むね」
「はい」
玄関先で颯己と一緒にお母さんたちを見送る。
ドアが閉まり、遠ざかっていく靴音が完全に消えると、颯己に後ろからギュッと抱きしめられた。
「二人きりの週末、すごく楽しみにしてたんだよね。心置きなくはーちゃんに触れられるし」
「い、いつも遠慮なんかせずに触れてくるじゃない」
「はーちゃんのお母さんたちがいるところでは、殆どスキンシップはしてないよ」
「それはそうだけど……」
「思う存分、はーちゃんを堪能できるなんて嬉しいな」
毎日、颯己か私の部屋で抱きしめたりキスしたりしてるでしょ。
個人的には十分なぐらいスキンシップしてると思うんだけど。
颯己にとっては足りないのかな…?
ふと、数日前に交わした綾芽ちゃんとの会話が頭の中に浮かんだ。