アイツの溺愛には敵わない
「いいね、そうしよっか」
「ほんと?」
「今まで俺がはーちゃんの誘いを断ったことある?」
「……ない」
そう言えば、いつも嬉しそうな顔で承諾してくれてたっけ。
「ちなみに、どこに行くか決めてあるの?」
「最近、緑地公園の近くにパン屋さんが新しくオープンしたらしくて。そこのパンが凄く美味しいらしいんだ。だから……」
「そのお店でパンを買って公園で食べようっていう計画だね。いいじゃん」
「ありがとう」
ニコリと笑うと颯己は目を細めながら私の頭をフワフワと撫でた。
「楽しいランチタイムになりそうだね」
良かった、喜んでくれてるみたい。
室内で過ごす二人きりの時間も減らせるから、未知なる狼モードはとりあえず先延ばしにできる。
一時的な対策ではあるものの、少し安堵している自分がいた。
「それじゃあ、ゆっくりと準備して出かけるとしますか」
「そうだね!」
それぞれ部屋に戻って支度を済ませた私たち。
戸締まりをしっかりと確認してから家を出た。