アイツの溺愛には敵わない

「いいね、そうしよっか」


「ほんと?」


「今まで俺がはーちゃんの誘いを断ったことある?」


「……ない」


そう言えば、いつも嬉しそうな顔で承諾してくれてたっけ。


「ちなみに、どこに行くか決めてあるの?」


「最近、緑地公園の近くにパン屋さんが新しくオープンしたらしくて。そこのパンが凄く美味しいらしいんだ。だから……」


「そのお店でパンを買って公園で食べようっていう計画だね。いいじゃん」


「ありがとう」


ニコリと笑うと颯己は目を細めながら私の頭をフワフワと撫でた。


「楽しいランチタイムになりそうだね」


良かった、喜んでくれてるみたい。


室内で過ごす二人きりの時間も減らせるから、未知なる狼モードはとりあえず先延ばしにできる。


一時的な対策ではあるものの、少し安堵している自分がいた。


「それじゃあ、ゆっくりと準備して出かけるとしますか」


「そうだね!」


それぞれ部屋に戻って支度を済ませた私たち。


戸締まりをしっかりと確認してから家を出た。


< 169 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop