アイツの溺愛には敵わない
秋晴れで空気も爽やかだな。
心地よさを感じながら歩き始めると、まもなくして颯己の視線を察知した。
「どうしたの?」
「そのワンピース、着ているところを今まで見たことがない気がするなぁと思って」
あぁ、なるほど。
だから凝視してたのか。
「これね、去年お母さんが誕生日プレゼントで買ってくれたの。受験勉強の息抜きってことでショッピングに出かけた時に」
「へぇ、そうだったんだ」
「あれから着る機会がなくて、ずっとクローゼットにしまってあったんだ。だから、このワンピースで出かけるのは今日が初めてなの。変…かな?」
ブラウンのグレンチェックのワンピース。
見た瞬間、可愛いなって一目惚れした服なんだけど……。
颯己の目には、微妙に映るのかもしれない。
「そんなわけないでしょ。すごく可愛いし、はーちゃんに似合ってる」
「本当!?ありがとう」
「あと、俺とのデートで初めて着てくれたっていうのも嬉しい」
少し頬を赤く染めながら笑う颯己に、心が軽やかに弾むのを感じた。