アイツの溺愛には敵わない

秋晴れで空気も爽やかだな。


心地よさを感じながら歩き始めると、まもなくして颯己の視線を察知した。


「どうしたの?」


「そのワンピース、着ているところを今まで見たことがない気がするなぁと思って」


あぁ、なるほど。


だから凝視してたのか。


「これね、去年お母さんが誕生日プレゼントで買ってくれたの。受験勉強の息抜きってことでショッピングに出かけた時に」


「へぇ、そうだったんだ」


「あれから着る機会がなくて、ずっとクローゼットにしまってあったんだ。だから、このワンピースで出かけるのは今日が初めてなの。変…かな?」


ブラウンのグレンチェックのワンピース。


見た瞬間、可愛いなって一目惚れした服なんだけど……。


颯己の目には、微妙に映るのかもしれない。


「そんなわけないでしょ。すごく可愛いし、はーちゃんに似合ってる」


「本当!?ありがとう」


「あと、俺とのデートで初めて着てくれたっていうのも嬉しい」


少し頬を赤く染めながら笑う颯己に、心が軽やかに弾むのを感じた。


< 170 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop