アイツの溺愛には敵わない
もっとラフな服装にした方がいいか迷ったけど、このワンピースにして良かった。
「はーちゃんと比べると少しカジュアル過ぎたかな、俺」
颯己は自分の服に視線を落とす。
テラコッタ色のTシャツに黒のコーチジャケットを羽織って、ボトムスはダークグレーのデニムパンツ。
それほどカジュアル色が強い印象は受けないけどなぁ。
むしろ……
「その服、大人っぽくて落ち着いた雰囲気だしカッコいいと思うよ。颯己に似合ってる」
顔が燃えるように熱い。
思ったことを素直に伝えるのって、こんなにドキドキしたっけ?
視線を泳がせていると、颯己は私の頬にキスを落とす。
「ありがとう、はーちゃん」
耳元で囁かれた私は、顔のみならず体中が熱くなった。
「人前でのキスはやめてって言ったのに」
「誰も見てなかったから大丈夫」
そんなの分からないでしょ。
周りに通行人はいないけど住宅街なわけだし、誰かに見られたかもしれないじゃん。
思わず反論しそうになったけれど。
幸せそうに笑っている颯己を見たら、自然と言葉を飲み込んでしまった。
まあ、いっか。
今回も特別ってことにしておこう。