アイツの溺愛には敵わない
「美味しい!」
自然に顔が綻ぶ。
スモークサーモンとクリームチーズとライ麦パンの相性が絶妙で、ほっぺたが落ちそうな感覚だ。
「中の具材もだけど、パンが旨い」
「うんうん、確かに!」
颯己の言葉に共感して深く頷く。
しっとりしていて程よい硬さと酸味で。
今まで食べたライ麦パンの中で一番おいしいかもしれない。
幸福感に浸りながらモグモグと食べ進めていた時。
「はーちゃん、ストップ」
颯己に声を掛けられた私は、サンドイッチを口に運ぶ手を途中で止めた。
「ど、どうしたの?」
訊ねるのと同じぐらいのタイミングで颯己の指が私の口の端をスッとなぞる。
驚く私を見つめながら、颯己はその指をペロッと舐めた。
「クリームチーズ、ついてたから」
「本当!?言ってくれれば自分でとったのに」
「だったら俺がとった方が早いでしょ」
そうかもしれないけど……。
いきなり触れられると心臓が飛び跳ねるんだもん。
カアッと熱くなった頬を片手で仰ぐ。
そんな私に優しい眼差しを向けながら、颯己は再びサンドイッチを食べだした。